≒optimist  現実逃避したい日々の記録。
きのね
はやいものでインフルエンザから10日が経ちました。
早々に弱音を吐いてしまいましたが、
おかげさまで元気にやっております。

* * *

今日は朝から、十二代目市川團十郎の
葬儀のニュースがテレビを賑わせています。

私にとって、市川團十郎と言えば、
舞台での活躍よりも、
戦後の歌舞伎界の大スター「海老サマ」こと、
十一代目市川團十郎の妻の生涯を描いたとされる
宮尾登美子の「きのね」という小説の中の
『聖母子』の章のことを思い浮かべます。

主人公・光乃は、歌舞伎の名門・松川家の嫡男
鶴蔵(モデルは先代市川團十郎)付きの奉公人。
主人に付き従う生活の中で光乃は彼の子をみごもるが、
鶴蔵に認められることのないまま、
彼女はひとりで子どもを生む覚悟を決める。

そして、月が満ちたある夏の暑い日、
たったひとり自宅の座敷で汗にまみれ、
苦しみ、のたうち回りながら、
光乃は元気な男の子を生む。

ここで誕生した男の子こそが、先日亡くなられた
市川團十郎さんにあたります。

歌舞伎役者の家で男の子が生まれるという
めでたさとはまったく異なる状況ですが、
小説の中ではもっとも輝かしく、神聖な瞬間として
描かれています。

おとなしく従順で、主人のために献身を貫いた女性が
はじめて自分の意志を貫き、運命を切り開いた瞬間が描かれた
この章は、作家・宮尾登美子の白眉と言えるワンシーンで、
読むたびに、自分の中に勇気がわいてくる気がします。

故・團十郎さんは、その運命にみちびかれるように
華やかな活躍のかたわらには、常になにがしかの苦難があったと
伝えられていますが、それに耐える力、
他者を包み込むような大きな愛を感じさせるお人柄は、
お母様譲りなのではないのかなと思わされました。

歌舞伎界にとって、勘三郎さん逝去に続く大きな不幸だと思いますが、
ひとりの人としても惜しまれます。

心からご冥福をお祈りいたします。



宮尾 登美子
¥ 704
コメント:「献身」がもつ力、深い愛情のなせる技を知った一冊です。

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